「屋上のテロリスト」
「屋上のテロリスト」は知念実希人さん作で2017年に光文社から文庫書下ろしで発売された小説です。
知念実希人さんは現役の内科医で医学の知識を生かした小説を書くことで有名ですが、この「屋上のテロリスト」は医学に関する話題が一切登場しないため、知念実希人さんの作品の中では異色の小説となっています。
この小説は帯に「100回だまされる」と大きな字で書かれており、かなり100回だまされるというフレーズを押していました。このフレーズに引き付けられ私はこの小説を購入しました。
が、結論から言えば100回だまされることはありませんでした。ミステリーをよく読む人はもしかすると一回も騙されないかもしれません。(意外と展開が予想しやすい作品になっています)
しかし、知念実希人さんの作品の中では私はこの作品が一番好きです。
はっきり言うと、この帯の宣伝の仕方が間違っていると思います。ではこの作品の何が良いのか。その魅力について紹介したいと思います。
あらすじ
まずはあらすじから紹介します。
この作品の舞台は日本。しかし現実の日本とは大きく異なっています。この作品の中での日本は太平洋戦争をきっかけに東西に分断されてしまいました。そして、そのまま統一されることはなく70年が過ぎた現在から話は始まります。
西日本国は資本主義経済であるためかなりの発展を遂げており現実の日本とほとんど変わらない状況です。
一方、東日本国は社会主義経済であり、長年軍が大きな力を持っていたため西日本国と比べるとかなり貧しい国となっていました。
そんな中西日本国の東京に住む、高校生の彰人は死というものに憧れを感じており、学校の屋上で自殺の準備をしていました。
しかし突然屋上に現れた女子高生の沙紀があらわれ彰人は自殺を思いとどまることになります。
沙紀はあるテロ計画を立てており、彰人はこのテロへの参加を沙紀から持ち掛けられます。不審に思いながらもその報酬を魅力的に感じた彰人はこのテロに参加し、ある巨大な計画へと巻き込まれることになります。
沙紀が立てた計画の正体とは?
魅力1:歴史パラドックス
私は日本史が好きで、もし歴史の事実がもし変わっていたらどうなっていたのかということを考えるのも好きなのですが、この小説はそれを具体的に物語とした体現してくれた小説でした。
片方は資本主義、片方は社会主義の国になってしまったということで、どこかの地域を思い起こさせるような状況であることも面白いところです。
東西が分断されてしまった背景はこれ大丈夫?みたいな内容もあり、知念実希人さんの挑戦的な側面も垣間見えます。
魅力2:ラノベ的で楽しく読める
ここまでの内容の雰囲気からすると、結構堅苦しい話なのかと思うかもしれませんが全くそんなことはありません。この小説の表紙はアニメ調ですし、内容やキャラクターの雰囲気は基本的にはラノベ的なので非常に楽しく読めます。
逆に小説が好きな人中にはつまらないと感じる人がいるかもしれません。ラノベ的な展開が大好きな人は問題ありません。
魅力3:必ず熱くなれるラスト
ラストの方の内容はネタバレになるので紹介しませんが、意外と読み進めていると中盤くらいで後半どうなるのかという予想はできてしまいます。
でもこの作品がすごいのは予想ができていても熱くなれるし、感動できるところです。
その理由は小説のラストでとにかく熱くなれる文章が続いているからです。なぜこんなにも熱くなれる文章を書けるのか。知念実希人さんの凄さを感じました。
魅力4:何度でも読める!
最後の魅力はこの作品が何度読んでも面白いところです。
100回読めるは言い過ぎかもしれませんが、最低でも10回は読めるくらいの面白さなのでぜひ読んでみてください。